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地域に開かれた、廃炉と復興を担う最先端技術の開発・実験施設

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)の楢葉遠隔技術開発センター(NARREC)は、東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所(以下、「1F」)の廃炉に向けた遠隔操作機器(ロボットなど)の開発実証施設です。研究管理棟と試験棟(幅60m、奥行80m、高さ40m)が並ぶ施設にて、バーチャルリアリティ(VR)システムやロボットシュミレータ、最大100人規模の会議室などの設備を備えています。 遠隔技術に関する様々な技術者が集まる、廃炉の未来を支える遠隔技術開発の拠点となっています。
特徴
福島第一原発の廃炉
最先端技術の開発
地域の将来を担う人材育成

今回は、JAEAの楢葉遠隔技術開発センター(NARREC)の大井センター長にお話を伺いました。

NARRECの大井センター長

施設の特徴を教えてください

NARRECは、遠隔技術開発の中核拠点として、1Fの廃炉を確実に進めるとともに、福島復興に貢献する役割を担っています。そのため、廃炉に関わる作業を実証するための試験設備の運営と、将来的な活用も期待されるVR(仮想現実)技術の開発やその作成に関わるデータ(環境データ)の整備、さらには、それらの施設を活用した地元の産業、教育に貢献する活動も行っています。

現在、試験棟では、1F内部の一部を模した実寸大モックアップ(模型)を設け、原子炉内部に溶け落ちた燃料デブリを試験的に取り出す作業の実証試験が国際廃炉研究開発機構(IRID)により行われています。

小惑星探査機「はやぶさ」に匹敵する困難なプロジェクト

この1F原子炉内部からの燃料デブリの試験的取り出しは、2010年に小惑星「イトカワ」から天体表面の微粒子を持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ」のサンプルリターンに匹敵するほど困難なプロジェクトだと言われています。

この作業は、天体探査とは比べものにならないくらい近い距離でのサンプル採取になりますが、高い放射線環境のため、人が立ち入ることができず、分厚い格納容器等で囲われ、内部の詳細を把握することができない非常に特殊な環境下で行われる作業となり、「はやぶさ」プロジェクトにはない別の難しさを含む作業となっています。このプロジェクトを成功に導くため、日々、実証試験が進められています。

楢葉町、浜通り地域への思い

NARRECが属する福島研究開発部門では、事故発生以降、環境中での放射線量のモニタリングや放射能濃度の分析・測定等を通じて、帰還困難区域の解除などに役立つ情報収集、発信を行い、福島地域の復興に貢献してきました。

NARRECでは、施設を活用した遠隔操作関連機器の展示会の開催や地域の子供たちを対象とした放課後課外事業の中でのロボット操作体験の実施等を通じて地域産業発展への貢献、人材育成にも力を入れています。

この地域の子供たちがこの施設での最先端技術に触れて、専門技術を学びたいと大学などに進学し、将来技術者としてこの地域に戻ってきて、我々と一緒に仕事をしてもらうようなことがあれば嬉しいです。

福島復興と廃炉に向けた使命

この地域の教育への貢献や、地元企業の廃炉の取り組みへの参画など、我々はこれからも楢葉町や浜通り地域の復興に協力していきたいと思います。また、廃炉という重要な使命を担っている施設として、皆さんと共に働いていきたいと思います。

 

写真提供:日本原子力研究開発機構

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